を観に、博多まで(!)行く。


まず場内が暗くなり、スクリーンに「THE BADGE」のライブビデオが映しだされた。1986年のラストライブのものだろう、短く編集された演奏シーンに続き、「1986年 THE BADGE解散」という文字が浮かび上がる。西暦部分が拡大し、日めくりのように18年進み、そして2004年「SHOJI IS BACK!」という文字が飛び出す。同時に、Link Wrayの「Switchblade」が流れはじめる。バッヂのライブ前に必ずかかっていた曲だ。歓声は、暗くなる前からあがりっぱなし。


暗がりの中、ステージ左サイド(下手)側の階段から、メンバーが現れた(楽屋が2階にある構造のようだ。トル氏いわく、昔のACBもそうだったとか)。
「Peter Gunn」に似たゴキゲンなLink Wrayのリフをバックに、それぞれのポジションにつく。まだボンヤリとしか視認できない。そして「Switchblade」のブレイクとともに「Hello! Shoji──The Badge!」と叫び、照明がつくと同時に、激しいスネアの連打から1曲目、なんと「Going Back To My 60's」がはじまった! 鳥ハダだ、ゾワゾワだ!
ジャケットの襟を立て、赤いリッケンバッカー(!)を低い位置で構える中村氏、Voxのベースを弾くジェフ山森氏、上手側が田中一郎氏、黒いストラト。そしてドラムはバッヂ時代を髣髴とさせるストライプのシャツを着た、川崎哲氏。


一瞬、観ている自分がいつ、どこにいるのかわからなくなるような錯覚を起こす。しかし、「Going Back To My 60's」のイントロで「Oh Oh Oh」とコーラスしているのは(レコードではギターのフレーズのところです)、これまでに観た事がない組み合わせなのだ。さらに考えてみれば「センターで唄う中村昭二」を観ること自体がはじめてである。何度か観たバッヂのライブでは、3ピースなので普通は下手側で唄っていたから(バッヂ後のRinxなどは未見)。などというのは後から思ったことですが。


自分自身わけがわからぬまま進み、1曲目はあっという間に終わる。そこからは、11月に発売される2枚目のソロアルバム「Modern World」(ASIN:B00061QUEI)からの曲、レコーディングにも一郎氏が参加した2曲(「Fuckin' To My Love」、「My Life Is Now」)が披露される。一郎側には譜面台が用意されているが、それを見るそぶりは全くない。激しく動きながら、ストラトをパーカッシヴなハーモニクスなども交えて弾きまくる一郎氏。オニのようにうまい。が、攻撃的。


そして中村氏の「さびれたGeneration、Working Class Generation!」というシャウトとともに、「One Boy In Tokyo」。かつてリリースされた音源で最後の12インチ、最後の曲、そして解散ライブでも最後に演奏された曲。


続いて「この曲は絶対唄いたいと思ってました」と、「Mr. T」がはじまる。早逝したバッヂのベーシスト、リーダー、田中信昭氏に捧げられた曲だ(1st ソロアルバム「All Or Nothing」に収録)。曲間、スクリーンに映しだされた在りし日の信昭さんの写真に向かい、もう一人の「Mr. T」、バッヂ以前のバンド、リンドンで信昭氏と組んでいた、一郎氏が情感たっぷりのギターを奏でる。


曲が終わり、ステージ中央に歩み出る一郎氏。「一瞬だけリンドンに戻らせてください」と、激しくギターをかき鳴らす。しばらく呆然と見ていると、聴き覚えありすぎのコード・ストロークに。「ふたりのフォトグラフ」だ! しかも詞はリンドン・バージョン、中村氏とハモる一郎氏! 背中がゾワゾワしまくりだ、千代子だ。リードギターは一郎氏、特徴あるソロをモノスゴク強靭にナゾり展開する。すごい……。


あまりの衝撃に溜息をつく間もなく、早いピッチで「Make It」。さらに……


レコードでは2番と3番の曲間、ベースの重いリフとベードラハイハットのリズムが絡むところからはじまる「Union Jackに魅せられて」。これもライブでは恒例だった、メンバー紹介とあわせて。
「この曲は一生唄い続けます」と宣言し、アルペジオから中村氏が曲に切り込んでいく……のだが、チューニングがおかしかったのかギターをブルーのセミアコ(どこのメーカーだろ?)に換える。その間、絶妙に引き継ぐ一郎氏。しかし、「Union Jack……」って事は、これが最後の曲? そして、最後の曲だった。ここまで、本当にあっという間。


そして、アンコール。長い長い拍手の後、再び全員登場。そして、「はじめて地元・博多のことを素直に唄うことができました」という中村氏のコメントに続き、テープ(かCD-RかMDかは不明)が流れはじめ、それにあわせて「All My Friends」が唄われる(これも2ndソロから)。「♪博多の街に生まれ……」と、地名、情景が織り交ぜられた曲は、天神というこの日のライブ会場以上にふさわしい場所はないと思えるくらい、ジャストな感じだ。曲の中程から、バンド演奏にかわる。


そして、この日のライブを支えたメンバーを再び紹介、まずベースのジェフ山森氏(元シャムロック、現オレンジズ)、リードボーカルをとって、ちょうどザ・バッヂの未発表音源完結編と同時発売されるシャムロックの初期未発表音源から、全員で「Mods Are Alright」。山森氏らが高校生の頃に作られた曲だそうだが、衒いのない若さに溢れたストレートな曲、とてもかっこいい!


続いて一郎氏の紹介とともにはじまったのが、「Tokyo Cityは風だらけ」……って!(「Tokyo Cityは?」「風だらけ!」というコール・アンド・レスポンスはナシです)
このメンバーでこの曲というのがまたスゴスギる。唄うは一郎氏。


そしてたたみかけるようにラスト、「Ready Steady Go」。一郎氏、中村氏ともに、ほとんどカッティングのみでガシガシ攻める。途中、中村氏のピックが弾け飛んだが、意に介さず、スタッフが手元まで届けても正面を見つめたまま、素手で弾き続ける。最高だ!


アラシのように終了し、さらにアンコール。最後はオープニングアクトをつとめられた久保田洋司氏を交え、全員で「Money (That's What I Want)」。


この日は本当に久しぶり(十数年ぶり?)のライブ、中村氏はいつになく饒舌に感じられた(いや、いつになくって、いつと比べてなのか?)。会場からも「おかえり!」という声がかかる。本当に、ステージに立てたことが嬉しくて仕方がないといった感じだった。終わってみればあっという間、しかし完全燃焼でもあったのだろう。冗談で「客用にもメンバー用にも救急車を用意してある」といってたが。


観る前は、当然バッヂの曲も期待したものの、やはり「現在の」中村昭二が見たいと思い直し、あくまで「バッヂ復活」ではなく「昭二復活」であって欲しい、なので「Switchblade」ではじまるなんて事は勘弁して欲しいと思ったり、また必要以上に信昭氏の事に触れられるのも感傷的になりすぎるのでは、などど勝手に思っていたが、ライブ後にはそういった考えが全て消し飛んでしまった。


18年前のバッヂのラストライブは、あらかじめ「解散ライブ」と告知された上で行われたのではなく、ほとんど突然に近いものだったとか(未見です)。ステージ上でも、メンバーの口からは一言も解散について触れられなかったそうだ。
ただ一部の観客にはその事が伝わっており、終演後にすすり泣く人を見て解散を知った人が多かったと聞く。
そして、中村氏や川崎氏、一郎氏の「信昭氏に対する想い」は、いちファンが計り知れるものではなく、外側からみて「感傷的」などといえるわけがないのであった。


どんな曲をやろうがそれは中村氏が作った曲だし、信昭氏との思い出深い博多でのライブなのだから捧げる曲もあって当然だ。新しい曲のかっこよさも十二分に感じさせてくれたので、心底満足。これからも、やりたいようにやって欲しい。