「怪奇!幽霊スナック殴り込み!」「任侠秘録人間狩り」

nitt2006-01-23

杉作J太郎、念願の初監督作品。なぜか早く行かないと見逃してしまうような気になり*1、仕事の後、唐突に観に行く。
上映3日目、開演(レイトショーなので20時から)の少し前にシネマアートン下北沢に着くと、場外にはいかつい(失礼)男たちが溢れ、外で物販も行われている。上映期間は連日「豪華ステージショー付き」のため、整理券が13:45から配布されているので、ひょっとしたら「当日では入れないか?」と思ったが、ギリギリ最後列の補助席で観ることができた。
さて、映画、というか、実際は全てビデオ撮影で階調の変換処理もなされていないため、「画質」は完全にビデオなのだが、肝心なその中身は……正直誰にでも薦められるものではない。杉J氏のことも、ある意味超豪華な出演陣のことも知らない人が観たら、プロが作った作品とは全く思えないだろう。監督が脚本と共に撮影も兼ねているのだが、例えば同様の作業をこなす塚本晋也などとは比ぶべくもない。出演者の一人であり当日舞台で挨拶されたパラダイス山元氏は「ネット上に感想が蔓延する前にDVD化して、はやく売り抜けたほうがいい(大意)」とおっしゃられていたが、正鵠を射ていると思う。
だがしかし、だがしかーし、例えば杉J氏の漫画を読んで「デッサン力がない」と難癖をつけるのは的外れなのと同様、不安定なカメラワークや演技や構成などを取り上げて云々すべきではないと思わせる「サムシングエルス」がある。技巧やおためごかしを廃した真っ正直さ、どうしようもなく滲み出す作り手の高潔な魂が感じられるのだ。いや、「人がよければ作品は面白くなくてもいいのか」と問われれば返答に窮しそうだが、思わず噴き出してしまう秀逸なシーンや熱いものがこみ上げてくるシーンもないわけじゃないですよ。さらに劇場での鑑賞においては、場内に出演者が多く見受けられるため(なにせ連日「豪華ステージショー」つきだから)、虚構と現実の区別がつかなくなるような得がたい経験ができるので、やはり本公開中に観ておいたほうがよい、と思う。映画のパンフレットも、まだ入稿されてなくて最終日ギリギリくらいに約1,000部納品されるらしいし。
杉作J太郎の東京ボンクラ学園」によると、まだまだ20作近い作品が待機中とか。あれだけの作品をみせられたあとなのに、「股旅の墓場」が面白そうにみえて仕方がない……。

*1:2/2追記:実際、日を追うごとに整理券があっという間になくなるようになり、毎日100人以上もの人が観られない事態になってるとか。そのため、最終日は急遽「午前0時(!)から」の回が追加され、さらには4/22から28日まで、追加公演が決まったようです