年末なので、仕事を終えて外に出ると、陽気な集団によく出くわす。忘年会帰りなのだろう、とても楽しそうだ。私は酒がほとんど飲めないのだが、父親は酒豪である。どれくらい飲むかというと、起き抜けにサントリーOLDをウーロン茶の如くコップになみなみとつぎ、夕方にはひと瓶カラッポになっている感じだ。その父に子供の頃、聞いてみたことがある。「酒を飲んで、なにかいいことはあるのか」と。答えは、「普通、人生は一度きりだ。しかし、酒飲みには二つの人生がある。シラフの人生と、酔いどれの人生だ」というものだった。「酔いどれの人生」とは何か、いまも想像することしかできないが、サケの力を借りて普段できないようなことをやる(例えば無礼になるとか暴力を振るうとか)といった類のものではなく、ポカポカして、フワフワした、幸せな感じなんだろうな、と思った。例えば、ごく自然に棹をさばく船頭さんが操る小舟に乗り、ふと見上げると頭上は満開の桜、みたいな。想像なので、抽象的だ。