誕生日になると、思い出す話がある(別に今日が誕生日というわけじゃないのですが)。
永六輔は、淀川長治と誕生日が同じで、ある日淀川氏に「一緒に誕生日を祝う会をしませんか」と持ちかけたのだそうだ。すると淀川氏は、「私にとって誕生日とは、生んでくれた母に感謝する日です。毎年その日は、母と二人で食事をすることになっています。ですから、その会に参加することはできません」といわれたのだそうだ。決して自分で祝ったり、祝われたりするのではない、自分本位で物事を考えてはいけないんだ、と永氏は思い直し、その年以降、自分の誕生日には母親に贈り物をするようになったのだとか(淀川氏、永氏ともにお母さんが亡くなられてからは、確か一緒に食事する会が行われるようになったと記憶しております)。
なるほどーと思ったものだが、今年の誕生日、実家の母親から宅配便が届いた。中を見ると、トラサルディとかいうブランド物の黒いセーターが入っていた。ま、それはいいんだけど、そのセーター、忍者が着る鎖かたびらのようにスケスケで、しかも袖が短かった……。「母親に感謝する日母親に感謝する日」と念仏のように唱えながらお礼の電話をしたが、「どう、気に入った?」と聞かれ、「うーん、まあ……」としか返す言葉がなかったであります。しかし昔だったら「こんなモン、着れるかいな!」などといったり送り返したりしたのだから、少しは大人になったのだろうか。いや、年齢的には十二分に大人だけど。