一期は夢よ、「心を込めて」ただ狂え

蜥蜴の迷宮

  • 菅原庸介「蜥蜴の迷宮」(1987年「DOLL」7月号増刊扱い)

定期的に読み返したくなる本がいくつかあり、これはその中の一冊。LIZARDのモモヨ自身の手による、フィクションの体裁をとった半生記。刺激的な記述多々あり。ストーンズの「It's only Rock'n Roll, but I like it」を、利休のいう茶の湯の真髄「火ヲ、オコシ、湯ヲワカシ、茶ヲ喫スルマデノコト也、他事アルベカラズ」や、さらには道元の「心の念慮知見を一向すてて、只管打座(ひたすらに座る)すれば、今少し道は新しみ得るなり」と結びつけたり。もちろん東京ロッカーズ前後の記録としても興味深く、伝説のエピソードの真実(あくまでフィクションという前提であるが)について語る部分などは、絶妙な筆致で爆笑までも誘われる振幅の広さ。以下、終章の一部。

 昔、ある男に、こういったことがある。
「君は初めから円を目指すタイプなんだね。しかし僕はね、傷つき角をふやさねば円に近づけそうもない。なぜなら」
 円とは無限多角形なのだから、である。
自分の人生を真正面から受け止め、至るところで恥をかき、傷ついてきた人達の記録でもある。